香天集7月22日 岡田耕治 選
加地弘子
尺取虫端に来て風待ちいたる
捩花や祖母の花緒の形して
木耳までゆっくり登りつきにけり
河鹿笛そっくりに鳴く夫にも
三好広一郎
ブラインドの影持ち上げる金魚かな
熱戦のスタジアム棚田水沸く
この腰のどこからわたし皐月生れ
香水や魔の直球と変化球
橋爪隆子
動き出すまで青鷺に付き合へり
梅雨晴間「万引き家族」観てよりの
ゆったりと夏服を着る風を着る
雨あがる一万株の四葩かな
中嶋 飛鳥
翌る日の茅の輪をくぐり一礼す
ソセスシサ古扇風機回りだし
挨拶や朝皃を出す家の蛇
外郎へレースの膝を近くする
藤川美佐子
鳳仙花昭和を生きた友とあり
曲げ伸ばす手足のありて夏休
小さき手を大きくかざし雲の峰
時鳥空を明るくしていたる
木村博昭
隅隅まで新聞を読む半夏生
夏木立音のみ聞ゆ小海線
みはるかす青野を黒き牛の群
グランドに長き影落ちはぐれ蟻
永田 文
窓抜ける風や青田の香りして
白シャツや海のひかりの貝釦
夕焼がころがっている瓶の中
蚊遣香ぽろぽろ闇をこぼしけり
中辻武男
初蝉や豪雨の痕を叫び出し
双葉より芽ざめて茂る柿の実よ
ラベンダーの夏の光彩蝦夷地より
踏切の傍にあり朝な草
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
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