2018年7月8日日曜日

香天集7月8日 三好つや子、神谷曜子、中村静子ほか

香天集7月8日 岡田耕治 選

三好つや子
ピーマンの筋肉質の空気かな
まじないも薬のひとつ浮人形
紫陽花やずぶりと深い寺の昼
短夜の大型家電泣いている

神谷曜子
月見草咲いてフクシマ動き出す
花葵すなおになりて歩きけり
梅の実が落ちて生家は誰も居ず
関東の果ての麦秋居すわりぬ

中村静子
羽抜鳥声を嗄らしてしまいけり
玉虫の感触残り掌
黒南風や俎板の傷増やしいる
行く先やめまといすぐに察知して

釜田きよ子
かたつむり時速計算しておりぬ
捕虫網大きな雲を捉えけり
蜘蛛の囲の七色にして獲物待つ
少年の身体能力青芒

橋本惠美子
ビーカーに標本の浮き五月闇
蛇皮を脱ぐ上等の美容液
けんけんの丸蟻たちの結界に 
推考の始まる顎や夏の星

宮下揺子
沙羅の花九五歳の母待たす
木苺を食む消しゴムのような人
梅雨晴に遅れてきたる疲れかな
噛み合わぬ話しの中を夏の雨

坂原梢
太陽を受けし桜桃手のひらに
梅雨長し横木の疵を深くする
水澄雨に吹かれて交じりけり
初夏のさざなみ最中杭二本

羽畑貫治
白南風や今日のペダルを軽くする
すいれんの両耳立てて水に咲く
花茣蓙や外国人が指そろえ
うかうかと免許を返し夏の果


*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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