香天集8月26日 岡田耕治 選
谷川すみれ
蝶帰る上昇気流にゆるやかに
秋出水途中の色を忘れ去る
台風の向きを変えたる絆かな
ゆっくりと水を含みて秋の夜
辻井こうめ
文字の無き絵本新たに涼しかり
星流る候文の古葉書
草を刈るただひたすらにひたすらに
夏野から大水青の始まりぬ
橋本惠美子
綾取りの川をすくいて梅雨出水
蝙蝠の闇連れてくる羽音かな
対面を交差させゆく梅雨の傘
二の腕が並んで走り夏休
砂山恵子
おめでたと言はれし夜の踊かな
これからのことは言はずに鰯雲
村の名が次々浮かぶ厄日かな
草市やひと客ごとに水を出し
澤本祐子
持ち重りする初なりの西瓜かな
揚花火家かにら見える刻流れ
夕風の水の匂いや冷奴
夕風や耳こそばゆき蚊の羽音
橋爪隆子
川音を加えて来たり夏料理
心太口がすべってしまいけり
流木を慰めている浜昼顔
成り放題に落ち放題の山桃よ
立花カズ子(7月)
甘酒やするすると喉冷しつつ
夏草や竜神様の水の音
青芒ふるえとなりし風のあり
背丈程伸びて風呼ぶ夏薊
永田 文
砂糖水記憶が沈む終戦日
男らの背中が匂う浴衣かな
うつうつと極暑に枕定まらず
早朝の夏書に墨の匂いたつ
村上青女
待ち侘びし君の声なる法師蝉
両側に黄金の稲穂一本道
稲刈機筋目正しくたくましく
校門と呼びし石柱秋の風
岡田ヨシ子
すぐそばに海の音あり心太
十薬の風が通りてお茶の時間
タオル干す香りを好み夏の蝶
飴ひとつ買えなくなりし里の夏
木村博昭
踏ん張ってすいすい流る水馬
誰からも嫌われてあり油虫
広島忌月曜の朝動き出す
うからやから去りにし居宅蝉時雨
立花カズ子
星空のほどよき風や洗い髪
宵宮の枕に届く遠太鼓
対岸の仕掛け花火が湖燃やす
遠花火時に列車が邪魔をする
*アップル京都にて。
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