2018年10月21日日曜日

香天集10月21日 三好広一郎、中嶋飛鳥、橋本惠美子ほか


香天集10月21日 岡田耕治 選

三好広一郎
父ひとり塩固まって秋の宵
恐竜の座骨の螺子の錆びて秋
天高し喪主のおしぼりぽんと鳴る
外から見るわたくしの部屋いつも秋

中嶋飛鳥
涼新た白杖に歩を添わせたる
球体のオブジェは無題九月尽く
女郎花道を違えて嗤い合う
草臥れて背中合わせをバッタンコ

橋本惠美子(10月)
流木に堰止められてつくつくし
魂の俯瞰の高さ花野ゆく
天の邪鬼素知らぬ顔の庭花火
止まらずに翳に群れたる蜻蛉かな

橋爪隆子
穴に入る蛇を咥えて飛ぶ鴉
伝えないことの泡立つソーダー水
あいさつや台風のこと加わりて
焼ける音もろとも秋刀魚皿にのる

橋本惠美子(9月)
中継や夏座布団を飛ばしたる
特訓の吹奏楽部夏来たる
噛みついて動かぬジッパーの暑さ
マニキュアの剥げて溶けだす九月かな

永田 文
輪唱の風となりたる花野かな
青空へまずは鋏を松手入れ
行く秋や波が波追う夕の風
原子炉の里より点り曼珠沙華

中辻武男
秋夕焼ダイヤモンドの色に富士
悠然と鯉が鰭振る秋の水
薄紅葉蝶と見違う枝一葉
白鷺や琵琶湖の秋に飛来して

村上青女
酔芙蓉朝の白さの殊によし
久方の蚊とんぼ今日を祝福す
秋の風はらからの穴埋められず
白玉のだんごとなりて鰯雲
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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