香天集10月28日 岡田耕治 選
谷川すみれ
飛ぶものは風に抱かる薬掘る
渡りきるまでの沈黙枯蓮
初凪やひとりで歩くということの
待春の鞴の力加減かな
砂山恵子
茸狩木の根の夢を探しいて
さよならと言はれる前に林檎剝く
何処にも戦の火あり秋桜
摘まれても踏まれてもよし草の花
辻井こうめ
碧梧桐の墓石に二つ椿の実
ゑのころの石の退屈擽りぬ
秋時雨土俵一辺朽ち始む
据ゑられし薦の酒樽里祭
藤川美佐子
無花果や見たことのない鳥の来て
良きことのために歩きて秋桜
コスモスを離れて迷う風のあり
毒きのこ見つめてあれば浮遊する
北川柊斗
骨壺をあふるるお骨薄原
行く秋の水面に映り草の影
秋桜やデイサービスのバス停まり
楼門に太き閂鵙高音
木村博昭
天高しアクアリュウムの鰯群れ
大いなる朝の便座の秋思かな
はじまりは蕾の多き菊花展
いきなりの訃報が届き菊日和
古澤かおる
心霊のスポットにしてつづれさせ
旅先の書店を巡り秋霞
龍潜む淵ある川面おだやかに
秋北斗貝殻が出る山の上
越智小泉
賞を得し菊堂々としておりぬ
園児らの駆けっこを追う風の秋
ゆく秋の少し猫背と言う鏡
借景に夕日を入れて鳥渡る
*秋田空港にて。
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