ストーブを消せばききゆんと縮む闇 鈴木牛後
「俳句」十一月号、角川俳句賞受賞作品から。北海道で酪農を営む作者の俳句に注目してきましたが、角川俳句賞を受賞されたと知り、たいへんうれしく存じました。選考委員の皆さんが仰るように、テーマ性がはっきりしていて厚みのある五十句です。牛を扱った俳句は言うに及ばずですが、例えばこの句のように、現実をやわらかく捉える目に、作者の感性を強く感じます。牛を育てる営みは困難の連続でしょうが、その困難を受容されながら、その日常をどこか愉しんでおられる、ということは、生きることを愉しんでおられる、そんなやわらかさが現れた一句です。部屋の明かりを消して、しばらくストーブの火の明るさだけで、一日をふり返っていた作者。ストーブを消すことによって、寝る前の作者を包んでいた闇も急に縮んでいったのです。「ききゆんと」というオノマトペが、明日へつながる響きをもっているようです。
*泉佐野市にて。
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