渡邉美保
テトラポッド膨らんでいる良夜かな
小鳥来るそんな心配いらないと
三体の等間隔の案山子かな
地蔵一体白曼殊沙華一本
砂山恵子
玄関に「散策」とメモ竹の春
けいちゃんと霧の路地から呼ばれたり
秋の声ひとさししゆびで空指して
全力で澄みたる水を飲む雀
宮下揺子
妙案の出そうで出ない秋の雲
腰痛に付き合う歩幅鶏頭花
蛇穴に入る難題を持ちしまま
公案のあり大花野にて遊ぶ
坂原梢
逆上がり出来ぬまま生き秋の空
歳時記の中をめぐりて秋の風
雨のあと匂いましたる百合一本
束の間の停電にあり今日の月
釜田きよ子
無花果の手応えの無さ持て余す
蟷螂の動きを真似るロボットは
亀のそのそ吾のろのろと秋高し
宵闇の一番似合う曼珠沙華
羽畑貫治
吾亦紅夜には夜の紅をさし
台風の接近を告げ赤とんぼ
秋の夕点滴柱押し立てて
毎食後薬が増えて穴惑い
安部礼子
禁断の実を食べている温め酒
華麗なる嘘と今宵の月の下
秋の声眉間をとおし歪みけり
健やかを装ってみる秋の虹
*大阪梅田にて。
0 件のコメント:
コメントを投稿