2018年11月11日日曜日

香天集11月11日 三好つや子、渡邉美保、加地弘子ほか

香天集11月11日 岡田耕治 選

三好つや子
烏瓜ぼくのマグマの行き止まり
体内のとある門より冬に入る
蔦もみじ若者ことば飛び火する
枯蟷螂ふいに汽笛の音がした

渡邉美保
十六夜や荷物の増えている小舟
目つむればここは薄暮のすすき原
風呂敷を解けば出てくる通草の実
冬が来るフランスパンの先っぽに

加地弘子
秋黴雨小さき方が先に飛ぶ
老人に光のあたる良夜かな
水音の繋がっている葛かずら
真葛原やわらかきもの踏みにけり

中村静子
亡き母の顔に近づき南瓜煮る
白湯にして秋の入日を飲み干せり
足音の一人となりて涼新た
どの窓を開け放ちても風爽か

澤本祐子
さかのぼる記憶の途中衣被
日を置いて読み返しおり青蜜柑
親芋や子芋孫芋強く抱き
話すこと次々ありて百日紅

神谷曜子
秋の空屋根屋来たりて手をのばす
負けそうで泡立草の風に吹かれる
交渉の行方を揺れて秋桜
梟の背中寂しきかたちかな

宮下揺子
戦争を語り兜太に残る秋
落ち込みし気持ちの前の烏瓜
憧れの旅に誘う良夜かな
涼新た銀座三越獅子の像

藤川美佐子
一しきり人騒がせの秋しぐれ
とくとくと日暮来ている刈田道
草の花パッチワークの出来上り
石蕗の花石庭の芯現れて

岡田ヨシ子
松茸やかまどで飯を炊きしこと
冬に入る待合室の旅の本
冬の空百人を乗せ下降する
ガラス戸を障子戸にする温もりよ

村上青女
渓紅葉一輌電車見えてくる
古里の軒の干柿犬の声
山肌の紅葉の中をドライブす
飛行機雲秋夕焼に高く伸ぶ

*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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