「俳句」一月号。搗き上がった餅を大きな丸い形にした時から鏡餅は一家の中心を占めるようになる。床の間に坐り、年末年始の親族を迎え、親族の去っていった静かさを見つめている。子どもの頃、あんな大きな餅をだれがどうやって食べるのだろうと、よく思いながら正月を過ごした。松過ぎ、黴を包丁で落とし、父がどんど焼きの日であぶってきた鏡餅を小さく切って、小豆粥に入れて食べると、一家の正月にピリオドが打たれる。鏡餅は年年小さくなり、やがてパックに入ってしまい、私の心配も、黴も、どんどの火も必要なくなったのだが。
*三重県伊賀市立上野東小学校にて。
0 件のコメント:
コメントを投稿