2018年12月30日日曜日

香天集12月30日 石井冴、森谷一成、谷川すみれ他

香天集12月30日 岡田耕治 選

石井 冴
雑学のうしろから来る大根焚
遠近を失いかけて日記買う
アロエに花百歳は隣にも
まほうびん冬銀河から持ち帰り

森谷一成
紅葉と黄葉の水しがらみぬ
深秋の木漏日おちて黄金なり
めまぜして経済をよぶ神無月
傾くや曲りの駅の開戦日

谷川すみれ
白い花から春の日のさざなみ
凧ここは地球というところ
満開の桜は羽毛抱かれる
一年生どうにも眠い鉛筆だ

澤本祐子
百段の歩幅の合わぬ冬紅葉
沈黙も一つの答え冬林檎
大根炊眼鏡くもりて口とがり
ストーブの奥にはいつもわらべ歌

西本君代(12月)
木菟と昼寝からもどる私と
日記買う石をひろって磨くため
冬の雨みんなの寝息近きこと
毛糸編む定年までの日を数え

浅海紀代子
少年の折紙無限冬銀河
口癖の「ヨイショ」の続く十二月
年の果母が時時居なくなり
シクラメン一人暮らしを灯しけり

西本君代(11月)
生姜湯や用多き日の句点とす
雪の花守るもの居て守られる
冬銀河道着着ること終わったのだ
足早に街へ散りゆき冬銀河

中濱信子
飛び石の一つひとつに秋深む
遠近法逆遠近法山眠る
鉄塔の常より高し山紅葉
花舗の店ふくらんで来る十二月

坂原梢
生きることむずかしくなり冬椿
いくつかの夢のかないて寒昴
冬空を佇んでおり時刻表
ポインセチア壁紙にある日の匂い

北川柊斗
うごかざる京の臍石冬の底
息白し服の色目の深まりて
カフェバーのテラスに憩ふ冬帽子
コンテナにのぞく錆止め冬ざるる

古澤かおる
十二月家具屋を歩き疲れたり
聖夜待つ色とりどりの紙コップ
冬の滝悪天候を味方とす
藁を打つ平らな石と木の小槌  

越智小泉
里の香を四角に蜜柑届きけり
もの忘れ増やしていたり冬芒
柚子風呂に息災の皺伸ばしおり
裸木となりたる枝よ天を指す

永田 文
日に当てて梔子の実の朱ふかむ
ちろちろと眠りをさそう榾火かな
好む人思い柿干す日和かな
冬天をそのまま沼に蒼湛ふ

*岬町小島にて。

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