2019年2月17日日曜日

香天集2月17日 谷川すみれ、三好広一郎、砂山恵子ほか

香天集2月17日 岡田耕治 選

谷川すみれ
陽炎やブルーシートの裂け目より
桜草ここでいつでも待っている
かたくりの花一年分のおはよう
魂の息するところ山葵沢

三好広一郎
子は母の匂いで眠るカモミール
亀鳴くやそこまで言うならオレが産む
蝶になるための笑顔をバイト中
撫で牛や焼肉好きの受験生

砂山恵子
左指にタトゥーバレンタインの日
節分や鼻の低さは親譲り
過去をみるやう白菜を剥いてゐる
先客に若き女性や紫木蓮

中嶋飛鳥
嘘のあと声高くなり冬の雨
如月や持上げ肩で扉押す
落丁の一枚何処へ春の雲
花時の揺れる橋なり渡るべし

加地弘子
十二月女の肌の聡きこと
初雪や友古民家に住み始め
冬林檎楊枝をさして輪になって
寒禽や私が先に目を閉じて

神谷曜子
節分の大鍋たぎる生家かな
話尽き雪降る音を聞く二人
凍滝に近づくためのあと一歩
廃校は今はカフェなり春近し

中辻武男
盆栽の松並造る冬眠期
早やばやと光を放つ桜草
立春の鴨の居並ぶ池の青
各各の枝が嘆きて寒戻る

岡田ヨシ子
兄の九九幼きがまね日永し
恵方巻求めるためにバスに乗る
春雨の予報へ水を撒きにけり

長谷川洋子
枝先の弾けし実なり小鳥舞う
白櫨実食い尽くしては鳥の鳴く
若き葉のちぢれて花を囲いけり
*岬町多奈川駅にて。

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