玉記玉
夕暮は白髪鞦韆は母
石が好き石に息づくしゃぼん玉
静寂といえる音あり梅ひらく
啓蟄や水鳴る方へ妣が来て
澤本祐子
茎立ちぬ言いたきことをそのままに
咲いたまま枯れてゆくなり水仙花
騒ぐ鴨また初めから数えゆく
大寒や胸のどこかが軋むらし
辻井こうめ
雪原の蠢く生命無量なり
山笑う「ネガポ辞典」と言ふがあり
風邪籠カレーライスが欲しくなり
梅二月達磨大師の面壁す
橋爪隆子
狛の日の始めて動く万歩計
一枚の重さのありて古暦
つんのめりそうな余寒の陽光よ
冴返る紙のコップの水つかみ
橋本惠美子
粕汁を吹き一言を呑み込みぬ
十二月句点のあとに余白あり
北風へガラガラポンを混ぜ返す
年守る素振り百回終えてより
坂原梢
声あげて春一番をつかみけり
車で売るクロワッサンに風光る
探梅や旧知の顔と巡りあい
バスの窓白梅の枝くぐりたる
前塚かいち
二月の明るき悩み相談日
絵手紙に炭火描いて二月かな
風花や歌声喫茶店に来る
生姜湯や渇きし喉を通過して
古澤かおる
撒くこともなく年豆を食べており
ため池の波紋一点返りけり
耳鳴りか妻の寝息か寒戻る
啓蟄や必ずもらう靴の箱
永田 文
還るため野を走りだす虎落笛
枯木立諸手をあげて空攫む
老梅の虚ろなる幹泰然と
春の磯畑のように人集う
*岬町深日、金乗寺にて。
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