香天集3月10日 岡田耕治 選
三好つや子
風光る移動屋台のベレー帽
板チョコの東の角より囀れる
一年中春の声して鳩時計
春光の鰭がからだに太極拳
玉記玉
おにぎりのてっぺん春を惜しみけり
行進の埴輪に兄のかぎろえる
陽炎に発酵したる神話の木
手拭いをひらく乙女椿乾く
砂山恵子
花冷えや丹波の鬼に酒一升
我回るほどに回れと風車
日永し二十回目のアンコール
朝咲きて夜へ散りゆくチューリップ
中村静子
木洩れ陽の名残を胸に冬の蝶
笹鳴をさらう産声はじまりぬ
煮崩れしおでん日向の香りして
水底へ光を編みてかいつぶり
宮下揺子
一月の菜の花溢るメール来る
手袋の中の小銭や薄曇り
雪催い指跡残る絵本あり
店たたむ夫の決心春の空
岡田ヨシ子
雑煮箸十膳揃うことのあり
梅林に大阪城の見えており
招かれしいきいきサロン雛の日
鯉幟曾爺曾婆と呼ばれたる
*札幌グランドホテルにて。
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