2019年3月17日日曜日

香天集3月17日 森谷一成、三好広一郎、加地弘子、西本君代ほか

香天集3月17日 岡田耕治 選

森谷一成
臘梅のうつむきなりに空の青
天牛堺書店破れ一月
  79.3/28  86.4/26  11.3/11
スリーマイルチェルノブイリフクシマどれも春
襞々の夜にうずもれ卒業子

三好広一郎
(あかがり)を割ってぐわつとスニーカー
金堂の消火器の赤眠る春
前列に埴輪の座り村歌舞伎
梅真白答案用紙はゴムの臭い

加地弘子
春の海黙っているは心地よく
すつぽりと型にはまり蝌蚪の国
春ショール順番のきて羽織りたる
遠くまできれいな蓬摘みにゆく

西本君代(2月)
耳袋故郷の山の遥かなる
密やかな小人の城よ霜柱
落ちてくる目で追ってゆく牡丹雪
姉のさす寒紅の筆見つめおり

西本君代(3月)
外国の絵本の色ねクロッカス
目をそらし続ける子あり春浅し
小さな靴コトコトと蛇穴を出る
ふきそうじ指の先まで春隣

辻井こうめ
ラナンキュラスウィンナーワルツ聞こゑむ
いくさなき三十年目さくらばな
薄明の朝を呼びゐる辛夷かな
春の空葉芽の赤色溶け出しぬ

西本君代(1月)
北風に吹き寄せられてボールと子
外灯のその幅に雪降りしきる
雪晴れや厚底の靴捨てるとき
湯の母と初浅間へと伸びをする

神谷曜子
春の雲ちぎって投げる「万引家族」
種いもを植える影あり親と子と
でこぼこな真昼となりて春を待つ
忘れ物探しに戻る三月へ

中辻武男
王座戦の手合せにあり春座布団
紙雛を流す小川と子とありぬ
早咲きの河津桜に笑み交す
遥かなる湖出航の東風告げる
*兵庫県武庫川女子大学にて。

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