花冷や一合と決め晩酌す 玉川義弘
句集『十徳』邑書林。句集名となった「百姓の酒の十徳冬至来ぬ」もそうだが、一巻の要所に酒が登場して、読んでいて心が温まる。長く農業に従事され、日中の心身を癒やすように酒が登場する。「一合」は、肝臓にも心臓にもよい範囲で、医者からも一合までと勧められるが、一巻を読み進めてきてこの句に出会うと、単に健康に気を使ってそうしたのではないことが伝わってくる。そうは書かれていないが、一合と決めるのは俳句のためではないか。いい俳句を書き続けるために、好きな酒を制限する。というより、いい俳句を書くことが、酒を飲むこと上回りつつあるのではないだろうか。これまでの句業をまとめられた作者の充実を喜びたい。
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