2019年5月26日日曜日

香天集5月26日 玉記玉、森谷一成、谷川すみれ他

香天集5月26日 岡田耕治 選

玉記玉
逆光の金魚もっともよくうごく
明るくて疲れる恋をして金魚
シャガールの空へ落ちゆく滝であり
右の手で考えることソーダ水

森谷一成
しゃぼん玉と正面衝突して来たる
貝寄風や他(あだ)し国びと地下鉄へ
昼酒の皿まで舐めて四月尽
憲法記念日ゲームの戦士疲れざる

谷川すみれ
どこへ行きたいコンクリートの蚯蚓
一本の道となりゆく噴水よ
蚊喰鳥家出少女がぶら下がり
暗黒の子宮に開く花火かな

中嶋飛鳥
髪束ね吊り眼となれり麦の秋
憲法記念日閉じし目蓋の眼うごく
うなずけぬことを肯き著莪の花
木下闇食指を立てて声閉ざす

辻井こうめ
倒木の林明るく草いちご
山藤やのっぺらぼうの羅漢さん
小鳥の巣あるとの掲示水車の音
瓶に挿し矢車草の色の数

橋爪隆子
それぞれの風をえらんで石鹸玉
ぶらんこや雲は大きな穴をあけ
白木蓮海澄んで空澄みにけり
新茶汲むかみ合ってくる会話にて

橋本惠美子
キセルからこよりの覗き目借時
花明り一人で入る映画館
応援やトランペットの春の空
説法の頃合を見て蝶去りぬ

坂原梢(4月)
甘党と辛党まじり葱坊主
いつの間に長老となり竹の秋
母の味丸くなりたる木の芽和
突き咲いて白木蓮の匂いかな

木村博昭
学び手は老人ばかり若葉風
母の手を振りほどきゆく若楓
愉しくて歩き疲れて花うつぎ
万緑や迷子になりし大人たち

坂原梢(5月)
五弁花の匂いあふれる蜜柑かな
空豆や気のむくままに飛び出して
風車一つ二つが回りけり
潮風のやさしさ包み花茨

古澤かおる
黴匂う女系家族の月日かな
河口まで自転車で来て白い靴
神戸の夏深煎り豆を百グラム
パン生地の寝ている間虹立てり

安部礼子
体温をいとしく思う夏初め
黒南風に失す足跡を匿いぬ
眠られぬ瞳卯の花腐しかな
オッカムの剃刀光り梅雨の中

羽畑貫治
水泡と浮いて沈んで濁り鮒
認知症梅雨の時空を独り占め
木下闇透かして探る白髪かな
わが世にて好きな物食べ蝮酒

永田 文
やわらかな風は肌へに更衣
青空を飛びて子等へと鯉幟
野を歩く五月の風を身にまとい
大屋根の光る瓦や柿若葉
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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