2019年6月16日日曜日

香天集6月16日 三好広一郎、辻井こうめ、柴田亨ほか

香天集6月16日 岡田耕治 選


三好広一郎
黄昏て桃には重し桃の核(たね)
蛍消えるそこ直葬の着地点
走馬燈骨の内まで灯が廻る
夕立の山が膨れるにおいかな


辻井こうめ
小綬鶏やデスクマットの古葉書
水待つ田水満つる田も夏燕
白白と大山蓮華雲を生む
本の名を少女に問はれさくらんぼ


柴田亨
杉銀杏老いは美し楠若葉
棺一基三つの御代を過ごしけり
一つ終え一人の帰路に風薫る
蝉生まる心療内科泌尿器科


中嶋飛鳥
百日の過ぎん四葩の傾きに
栗の花朝より眩暈はじまりぬ
バスを待つ蛍袋に屈みいて
肩越しの声たしかめる遠花火


岡田ヨシ子
夏草や子牛のために切り揃え
外食の日ありて中華冷やし麺
乾燥機の寿命とともに梅雨に入る
亡き母の白髪となりて墓洗う


中辻武男
葛城や百万本の山つつじ
蛙かと鉋の音に耳澄ます
物干せば梅雨雲直ぐに構えけり

田を植えてアイガモ農法ゆえの笑み
*岬町小島にて。

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