2019年7月14日日曜日

香天集7月14日 加地弘子、三好つや子、橋本惠美子ほか

香天集7月14日 岡田耕治選

加地弘子
夕虹や昔と違う家族にも
夏燕途中で止める意味は何
青芒間際まで待つ真髄よ
尺取の背中押されて走り出す

三好つや子
斜め向く蛇口がひとつ啄木忌
夕焼けの軋む音して父の肩
6Bの息吸って吐く向日葵よ
南瓜熟れる河内訛のつよい空

橋本惠美子
トロッコの先頭に乗る蜥蜴かな
恐竜の頭が潜る水遊び
五月雨を集めソーラーパネルかな
いつよりか蛇の骸の消え去りぬ

澤本祐子
紫陽花や時にぼんやりすることも
シャッターを切って薔薇との別れかな
梅雨に入る画鋲に残る切れっ端
立ち止まることも大事と梅雨の月

砂山恵子
上からか脇を攻めるかかき氷
滝の音や今日一日をどう過ごす
靴下を履き替へてより夏館
飼ふことの出来なき猫よ木下闇

橋爪隆子
息のんで息を止めたり大蚯蚓
万緑を駆け回わりたる帽子の黄
風薫る飛鳥をめぐるスニーカー
青葉騒キトラ古墳の虎目覚め

中嶋紀代子
青鷺や高僧のごと瞑想す
縁起良しこの初夏の鸛
草を刈る外つ国の草増えつづけ
瞬間に冷却されて大百足虫

神谷曜子
水中花夜更けて芯の蒼さ増す
ほおずきの花を手向ける墓のあり
雨乞や岩礁に鳥立ち尽くす
肩甲骨ゆるめ茅の輪をくぐりけり
*和歌山市開智高校にて。

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