香天集9月1日 岡田耕治 選
玉記玉
翡翠の羽のしずくから老いる
逝く夏や魚影ふたつみつ少女
桐一葉水中の水掴みけり
秋雨は斜めだったり夢中だったり
森谷一成
出水入れ高層群へくねるべし
ビー玉の朱なる墜景行行子
炎天の身を一本の翳に入れ
つまらぬ奴がいばる八月十五日
橋本惠美子
フルフェースの目と目を合わせ走り梅雨
白南風や坊ちゃん刈りのくびねっこ
働き方改め蟻の出てきたる
台風やストックの底見えてくる
前塚かいち
猫じやらし遊び疲れて捨てられて
恐竜の声が聞こゆる夏休
放哉の句集を譲り盆休
絵手紙の西瓜の種に残る暑さ
釜田きよ子
押し出され戸惑っている心太
サングラスの中の目玉を想像す
朝顔に寝起きの顔をさらしけり
味わえる男の料理胡瓜もみ
坂原梢
麻酔から覚めたる母に八月来
一日の玉の結晶麦藁帽
炎天の時間をかけて水をやる
風鈴の鳴りて静かな回廊よ
浅海紀代子(7月)
梅雨明けやあまたの音が耳を抜け
今朝ひらく百合に心を定めけり
緑陰に目を閉じ次の風を待つ
草引きの草をほめたり憎んだり
中濱信子(7月)
雨打って紫陽花の青仕上りぬ
蝙蝠のピンク色なら愛される
博打の木これより先は木下闇
桔梗咲く叩いて干せる洗濯物
北川柊斗
うすれたるデニムの藍よ天高し
提灯の二つ新し地蔵盆
秋暑し景ひづませしバスドラム
涼新た壁に眼球断面図
中濱信子(8月)
入道雲テトラポッドに潮溜り
夏燕投票おえた吾の上に
真二つに切って誉めたる西瓜かな
新涼のバッグいつもの小鉛筆
浅海紀代子(8月)
ほととぎす夢のあわいを探りけり
縄文系弥生系居てかき氷
落蝉の目ん玉二つ宙睨み
溜息の度に鬼灯赤くなり
北村和美
秋立つやY字路のカフェ匂い立ち
七夕の言の葉の丈揃えけり
リビングの床が寝床や夏の月
ウクレレを取り出してくる晩夏かな
朝岡洋子
麻日傘写真の中の若き父
シベリアの冬知る人の夏の葬
ベランダのポットに茄子の棘硬し
夏木立コース迄影くっきりと
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