三好つや子
言霊の塒としての烏瓜
動物園に昼のない顔冬に入る
はにかみを深める遺影冬りんご
着ぶくれて私自身を俯瞰する
砂山恵子
黒潮を目指す寒夜の魚たち
海溝に鱗広がる霜夜かな
言霊を谷に潜めて山眠る
鈍色の雨の降る夜春着縫ふ
橋爪隆子
半ぺんの疲れ切ったるおでんかな
着ては脱ぎ脱いでは着けて十一月
夕暮を抜け出している石蕗の花
柿の竿空つついたりひねったり
宮下揺子
冬帽子北から戻り北へ行く
祭神は木彫りの「おかめ」一の酉
涙腺の緩い夫なり玉子酒
クリスマス美術館にて再会す
羽畑貫治
今年こそ禁酒を誓う大旦
にっこりと太師の笑顔葛晒す
寒月光明日へと出す力瘤
春近し一直線に齢重ね
*高槻市にて。
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