香天集2月2日 岡田耕治 選
渡邉美保
雪催仕上げにかける紙やすり
日脚伸ぶてのひらに解く紙礫
鼻といふ重たきものを雪仏
塩パンと発酵バター寒に入る
森谷一成
未来からすっくと名告り薬食い
手の中へみんな傾く去年今年
アマゾンの箱のつづきを恵方道
大寒のX線に射透かされ
北川柊斗
薄闇の如来のまなこ春近し
ひたひたと人類の果星凍つる
冬うらら北欧家具のモデルルーム
陶工のさだまるまなこ榾爆づる
前塚かいち
長く居て四天王寺の四日かな
人日を遊んで来よと猫を外へ
喪中なる人より来たる初便
今生のこれが終わりと賀状くる
夏 礼子
言葉数だんだん減らし落葉踏む
約束は破られるもの冬夕焼
煮凝や不問にしたきことのあり
逆剥けは親不孝とか慈姑煮る
宮下揺子
余白とは大きな希(のぞみ)冬日向
移りきし終の棲家に椿咲く
絵硝子の鼠が動く雪催い
冬晴や軽トラックの野菜買い
浅海紀代子
大鍋の煮つまってくる年忘れ
初句会鉛筆の芯尖らせて
我に残る月日大切初暦
春隣手に転がして薬飲み
釜田きよ子
不機嫌な地球をなだめ梅咲けり
海底の昏さ引きずり煮凝りぬ
啓蟄の爪すこやかに伸びており
永久にお内裏様は核家族
坂原梢
煮凝や昭和を少し透かしたる
初電車女車掌のうす化粧
青空を群れはじめたり初鴉
長命に試みありて寒椿
橋本惠美子
注連飾穂先を少し上に向け
除夜の鐘痛いところに響きたる
カレンダーの歪みを正し年新た
歌留多会スマートフォンが声を出し
中濱信子
乱しおく机上にありて去年今年
正月五日元の二人に戻りたる
救急車しぐれの中を過ぎゆけり
真っ先に日本水仙咲きにけり
櫻淵陽子
春着の娘おはじき五枚握りしめ
冬日向首をすくめる雀たち
風花や足組むことを忘れいて
恵方から太巻き買って来たりけり
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
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