香天集3月15日 岡田耕治 選
神谷曜子
春の雲自分を追ってひた歩く
饒舌で気ままな根っこヒヤシンス
待つことの途中土筆を採りに行く
病室の花めいてありバレンタイン
砂山恵子
手の中に朧閉じ込め放ちけり
夕昏の明るさにあり種案山子
考える人のポーズで春眠す
鋭角がゆくり丸まり芽立かな
加地弘子
枯れきって時に方角見失う
囀りやよく打たれたるゴムボール
七十路の真ん中にして青き踏む
次の世も雀でいたい寒雀
坂原梢
水道の蛇口一滴春を待つ
薄氷を割って未来の見えにけり
春の色ガラス細工の心にも
春一番ショルダーバッグの口開き
坂原梢
生活を支えし針を納めけり
春の月別れし後の手のぬくみ
春ショール時間を戻し抽斗へ
紅梅の香りに染まり一湿り
小島 守
春の雨忘れた位置に傘のあり
売り切れたままの棚から冴え返る
雛飾る個個の顔には触れないで
来客がすぐ去ると言う雛遊
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
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