香天集3月29日 岡田耕治 選
玉記玉
妹は草姉はしぐれのいろをして
球面はどこも天辺冬耕す
初蝶に触れたる指の硝子めく
春雪や無音で育つ閏秒
森谷一成
ビルに舞う袋一まい春来る
ボール遊び禁止の御触れ原発忌
検梅は慰安婦のこと武漢凍つ
海禁の俄なりけり杉の花
中嶋紀代子
偶然のなかの必然朧月
益軒を手本としたり春の山
蕗の薹すっくと伸びて開きたる
主なき老梅として花が来る
西本君代
白木蓮伐られて雨を見失う
振り向いて纏う光の卒業す
憂鬱が膨らんでくる莟雨
卒業の花道の子よ目で話す
釜田きよ子
気の利いた言葉を探す山桜
やけに飛ぶコロナウィルスと蒲公英と
致死量の予兆前兆春の闇
夕闇に誰の残像白木蓮
吉丸房江
春告草二輪並んで枝の先
大人の咳子供の咳にもマスクつけ
曾孫には橙と決め苗木市
残しおく大根に花点りけり
*犬鳴山にて。
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