2020年4月19日日曜日

香天集4月19日 石井冴、加地弘子、三好広一郎ほか

香天集4月19日 岡田耕治 選

石井 冴
終日を眠る耳たぶサイネリア
三鬼忌の丸いポストに委ねけり
さくら散りゆく向かい合う息と息
全開の十分間の花冷え

加地弘子
竹の秋昼の眠りを素通りす
春北斗胸のロケット交信す
子らの声探し疲れし桜かな
土筆煮て明るい雨の夕間暮

三好広一郎
立食やみんな四月の初対面
相席や上目遣いの蜆汁
夕焼に手を突っ込んで躑躅切る
ハルキトク見えない敵に陰と陽

宮下揺子
逆光や思い切り吸う奈花の香
遺影にと桜の下で笑い合う
右脳に溜める満開の桜かな
吊橋を渡り切ったり山笑う

北村和美(4月)
一滴も飲めぬコップの深き春
感情のブレーキゆるみ春の蝿
空っぽの弁当箱や春惜しむ
山笑うファンデーションの剥がれゆき

神谷曜子
詩のような朧の月を持ち帰る
山茱萸の花寂しさに手を洗う
春禽のひゅっと下り来る谷のあり
春風の回覧板と大男

北村和美(3月)
後れ毛のぱらりとほどけ風光る
シャワシャワと茶筅の音や水温む
啓蟄やワイパーのゴム軋む音
フランス刺繍のハンカチと春の星

永田 文
夕ざくらつどう人なき小暗がり
あまりある花を一人で満喫す
花散らす風はページを繰るごとく
水泡の田んぼに春の影うごく

中辻武男
汚れなき紙敷いてあり燕の巣
夜桜の月に語りし想いかな
天上の師が眺めいて藤の花
盆栽の松の花摘み家に居る
*岬町小島にて。

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