2020年4月26日日曜日

香天集4月26日 安田中彦、玉記玉、谷川すみれ、中嶋紀代子ほか

香天集4月26日 岡田耕治 選

安田中彦
少年とたんぽぽの絮汚るるや
天竺は遠しと花の筏かな
イルカショー見てゐる春の愁ひかな
白蝶を指から放ち少女去る

玉記 玉
ぶらんこを百回漕いで考に会う
鴬の声そらいろになっている
ゼブラゾーン来る卒業の袴たち
マナンデトキニキュウコンヲウエマショウ

谷川すみれ
揚花火過ぎし月日に似て三秒
玫瑰や国境線の黒い海
麦の秋軍人手帳の令残り
走っても走っても影がついてくる

中嶋紀代子
この今を生き切れと言う風車
家に居ることを強いられ蝶の昼
休校の子にと選びて花の箋
ねむの里開きし人よ春逝けり

夏 礼子
日だまりの形がのこり蕗の薹
春の水さて包丁を研ぎましょう
聞き耳のそれぞれに立つシクラメン
春愁や金平糖の角あまた

木村博昭
一山の浮き立つさくらさくらかな
やわらかくちぎれてゆけり春の雲
麗日の見えざるものに怯えおり
ためらいも疑いもなく朝桜

正木かおる
約束を守り通してチューリップ
茶畑がそのまま届きそうな風
早苗田のひろがってあり水面下
気晴らしの手玉きらきら夏日向

安部礼子
言の葉に逃げて自今は春の風
春愁白ブラウスのしみにある
春の雷昨日のカレー食べてゐる
大空をベランダに干し山笑ふ

古澤かおる
うららけし駐車場に継ぐ駐車場
花曇り屏風の中の一騎打ち
本堂の作りは質素花祭
虎杖やコップの水は七分目

嶋田 静
陽光の首美しき残り鴨
芽柳のしだれて隠しはじめけり
水色にぱっと決まりて春袷
流し台紋白蝶の飛び出して

萱村豊生
ハゼの実がいくつも落ちて道になる
庭先の木に登りたい春の虫
いろいろな声で目覚めるつくしかな
行く先がピンクに染まり春が来る

櫻淵陽子
昼の蝶チャイムの響く保健室
芝桜丘駆け抜ける風のあり
ヒヤシンス思い出せないパスワード
行く春やプラットホームの遺失物

萱村 環
学校の今年の桜まだ咲けず
満開となってきたのに花見なし
自転車の前かごふさぐ花ふぶき
竹の子だごはん天ぷら若竹煮
    
斑 猫
この猫よ春来たれども恋知らず
花の下音楽会の粛粛と
瀬戸内を舞えや踊れや桜鯛
杉花粉コロナの菌も祓いけり
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。満天星。

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