香天集5月10日 岡田耕治 選
三好つや子
朧夜の踏んばっている父の肺
紫雲英野に前世のあり石眠る
春愁の出口を探すルーペかな
青蛙生まれながらの顔に禅
柴田亨
春の闇原始のいのち生命蝕む
ほしあまたながれうみへときえるおと
とどまりぬ春の時雨の梢にて
春籠り寄り添うものは伸びをして
橋本惠美子
啓蟄や合わせ鏡の奥に奥
パスポートの期限が切れて野に遊ぶ
時計屋のそれぞれの時暮れ遅し
往来の制限をして鳥帰る
小島 守
開店の花束にして放置され
草むしる人に気づかれないように
梅を干す越えてはならぬ国境
月涼し不通になりし人のこと
岡田ヨシ子
入学の言葉はインターネットにて
春マスク長持ちさせる口の飴
品切れの戦後の暮らし夏きざす
会う人はなけれど夏のマスク縫う
*大阪教育大附属天王寺中学校・高等学校にて。
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