香天集7月5日 岡田耕治 選
渡邉美保
虫瘤の中の混み合ふ半夏雨
片羽根を広げ涼しく充電中
祭笛二つの窓の開いてゐて
合鴨のつつく植田の水輪かな
谷川すみれ
巫女となる六年生の秋祭
歓声を遠く聞きたる花梨の実
すれ違うよき人夜の鰯雲
先代とどこかが違う葡萄かな
浅海紀代子
春の野へ帰りの時刻捨てようか
蛍狩汚さぬように息をして
ランドセル負うようになり立葵
ゆすらうめ昔むかしを手の平に
橋本惠美子
夏来る種痘の跡を見せ合いて
地球儀の日本は赤夏に入る
補助輪もペダルも外し走り梅雨
青嵐ペコちゃんの舌引っ込める
朝岡洋子
くちなしや一対の箸洗う宵
万緑の濃淡の中一人居て
水面を切り来て上る夏燕
面差は志功の女クレマチス
河野宗子
モノレールのどを通りし心太
手すりから一歩踏み出す夏の空
アイマスクつけて夏野をさまよいぬ
梅雨寒や白クマを抱き眠りたる
吉丸房江
五月闇吹き飛ばしたりアマリリス
雨音の止みて刹那に薄日差す
四方を開け放ちおり梅雨の晴
つつがなく暮らす家族の夏衣
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