香天集8月23日 岡田耕治 選
石井 冴
仰向けの蝉を起して鳴かれけり
胎内の私が揺れてハンモック
髪洗う流線形の魚となり
祖母の手の戻って来たる日向水
安田中彦
面変はりせし鬼百合が身のほとり
海豚飛ぶしぶきを浴びてゐる残暑
自失して話しかくるは秋蛍
小鳥来るそこはわれらの被爆の地
中嶋飛鳥
二丁目の向日葵の影のりかかる
胸の手を染めて立ち去り黒揚羽
手に掬う水の容を秋の声
マクベス夫人に似て手を洗う秋
木村博昭
愛されているとは知らず兜虫
いま妻の頭の中は水羊羹
薄翅蜉蝣戦死の父の顔知らず
朝八時六日の蝉が啼いている
小島 守
起きたなら身の傷み出す今朝の秋
整えるために分け入る薄原
秋桜明日のことは決めないで
秋灯二つを点けて爪を切る
*大阪市内にて。
0 件のコメント:
コメントを投稿