香天集8月9日 岡田耕治 選
柴田亨
佐渡裕パンデミックにタクト向け
できること全てを選び夏に入る
八月のシュプレヒコール口を閉ず
金魚玉パンク修理を待つことに
渡邉美保
耳だけが集まつてゐる薄原
烏賊干して白一色の風となる
から揚げの虎魚の目玉失せてあり
浮遊する不要不急の白日傘
三好広一郎
長靴を履かなくなって蝉しぐれ
空調の効かない芝居金魚草
蛍狩出口に蛍の裁判所
夕刊の一面想う夏の昼
砂山恵子
開きては眠ることなき花氷
炎天やまつすぐ進む滑走路
まだ雨を含みたる雲百日紅
秋の日の光溜めたる青さかな
三好つや子
無声映画の入口こちら蝉の穴
八月や耳のかたちの麺ゆがく
あいまいな返事を覚え浮人形
直立の薄い目をして鶏頭花
橋爪隆子
庖丁にかみつかれたる南瓜かな
水羊羹カパッと開ける缶の蓋
梅雨の闇一週間の予報また
釣竿の先っぽに触れ夏の雲
岡田ヨシ子
青青と育つ思い出額の花
表札を書かせてもらう梅雨晴間
寝たきりにならないように昼寝して
あいさつをくれる白靴高校生
堀川比呂志
空向いて泳げば旗のゴールかな
汗流れたどりついたる川の記憶
エレベターの向こう夏空こちらにも
ひたすらにちいさくなりて赤とんぼ
*豊中市立小学校にて。
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