香天集11月22日 岡田耕治 選
安田中彦
黄落や父いつからか薄化粧
文化の日頭冷たき消火栓
鶴来たる湿原を奥座敷とす
入り口を犀が封ずる冬銀河
石井 冴
玉結びの母が来ている竹の春
坐禅石広く使いていぼむしり
石叩きジュラ紀の岩に隠れけり
小鳥くる太極拳は声惜しみ
中嶋飛鳥
つづれさせ聞きもらしたる続柄
抱く兒の視線の中を鹿の声
小春日の紙にこぶしの重石かな
短日の一打の余韻持ち帰る
玉記 玉
ペン先に言葉死にゆく初時雨
美しき臓腑と歩む霜夜かな
はからずも総身の管時雨けり
寒紅の語る黄ばんだ空のこと
三好広一郎
大根や打ち首にされなお白し
複写機の光線銀杏の悲鳴
おなじ高さおなじ角度や冬耕(うな)い
目の前がこんなに遠い冬至かな
加地弘子
山茶花の時々いたす勘違い
楽しみな鞄の中の菊日和
白息の坊主頭が一礼す
ふわふわの靴下にして末枯るる
木村博昭
獣園の象の訃音や小鳥くる
友愛を群れのかたちに鳥渡る
小春日の庭は余生の奢りかな
鯛焼をくれる隣の人の声
古澤かおる
石蕗の花皺が指紋におよびたる
ポインセチア人声高になる人のあり
初時雨手の甲で猫撫でてみる
はんこ屋が現れてあり酉の市
松田和子
白河線君と乗り来て冬銀河
一つずつ端山の中の冬紅葉
花柊立ち去りがたき香かな
石落の花茶会の床へ膝すすめ
岡田ヨシ子
今年米うどんスープを入れて炊く
紅葉の山を見上げる感謝かな
デイサービスブロッコリーの漢字知り
冬近し終わり近しの歳となり
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