香天集3月21日 岡田耕治 選
三好広一郎
おおっぴらに抱擁交わす山笑う
国宝の裏も国宝風光る
春光の枯れて眩暈を失いつ
朧夜や遊びに来いという人魚
加地弘子
桜草こぼれしものの咲きはじむ
明暗のくっきりとして蝌蚪の紐
土筆摘みおれば生誕しらさるる
芹引いて津波の泥の現れる
夏 礼子
啓蟄や半熟玉子になる五分
来し方を漕ぎ始めたるブランコよ
たんぽぽの励ましの黄でありにけり
遠く来て秘密基地から土筆とる
砂山恵子
ふんわりと座席に寝をる春ショール
帰る鳥ニ十羽までを数へたる
春光や手押しポンプの柄はS字
図書館は十時に開き犬ふぐり
北村和美
半ドンの姉とたこ焼春火鉢
タンポポや一つひとつに名前付け
卒業の吾子のネクタイ跳ね上がり
カレーにはチョコを隠して春休み
松田和子
海原へ雛人形の舟はこぶ
春の土雀の群とブルドーザー
経響く赤き夜空のお水取り
鶯や枝から枝へ風の音
岡田ヨシ子
カステラにしたとバレンタインの日
三匹の猫を乗せゆく春日向
うかれ猫遊ぶ子見かけなくなりて
タンカーの動きの止まり春の海
永田 文
むらさきに山襞芽吹く朝かな
梢にもほのかなる紅春兆す
きらきらと玉菜畑に残る雨
陽炎や小犬と走り消えにけり
中辻武男
自重しており好物の汁粉から
黒松の好む寒肥忘れずに
雛終う草花振りし子らの顔
南北の交代を待ち鳥渡る
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