香天集3月7日 岡田耕治 選
渡邉美保
落椿掃き寄せてゐる誕生日
春光を水切り石の跳ねる音
蜷の道完結はその百年後
春光や大きく反つて山羊の角
久堀博美
朝刊のビニールが濡れ菜の花忌
春光がころがっている捨て畠
古草の平熱という温さかな
本棚の天井低し朧の夜
宮下揺子
日向ぼこ貧乏ゆすり勧められ
父を恋うくるりとむけし衣被
蝋梅の満ちる日母を預かりぬ
好きなものは最後に食べる桃祭り
古澤かおる
朝寝かな自作の器に猫を入れ
暮れてゆく河口の空や春の鴨
歪みなく接がれし土器よ揚雲雀
古草の湿りを保つ陽射かな
小﨑ひろ子
小径なる単線列車梅けぶる
帰田譜の文字遥かなる夕霞
冬越しの鉢にあふれてシクラメン
十年忌青き光の消えぬまま
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
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