2021年4月11日日曜日

香天集4月11日 柴田亨、三好つや子、久堀博美、宮下揺子ほか

香天集4月11日 岡田耕治 選

柴田亨
石を抱き命つらぬく大樹かな
名づけ得ぬものたちといて朧月
艶やかに脱ぎ散らかして薄緑
ひこばえに光を集め神の杜

三好つや子
鬼ごっこのみんな鬼とて夕桜
燕来るパイの折り方包み方
永き日の右へ右へと逸れる足
仏心をなぞっておりぬ水馬

久堀博美
行く春の歯が立たぬ本読んでおり
花の底露わにしたりチューリップ
春の道大事忘れて戻りけり
飛花しきり独りで棲むと決めてより

宮下揺子
哀しみが追いかけてくる春の月
花曇り白寿の母に見送られ
嫌がりし母を連れ出す花の下
山笑う無言のままに二人居て

古澤かおる
湯の温度低く一番茶を淹れる
花疲れクリアファイルを持ち帰り
大柄の住職の袈裟花吹雪
坂道は墓へと続く彼岸かな

牧内登志雄
豆腐屋に娘が戻り桜まじ
連弾のカノンの調べうららなり
来し方の誤植落丁春の行方
花篝月を映しているところ

小島守
今事故が起こったと言う花水木
十キロを痩せた男の春日傘
食べるほど味濃ゆくなる浅蜊かな
閉店の続く駅前夏隣る
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

0 件のコメント:

コメントを投稿