2021年5月12日水曜日

耕治俳句を読む(恋ならばの句、検温の句) 十河 智

恋ならば恋で受けよと夕牡丹  岡田耕治
 夕牡丹、恋の場面によく似合う。仕事帰りに誘ったのかな。誘った方の思いが、この句になったとも言えますね。成就したのでしょうか。
 ふと、別のことも考えに浮かびます。大学生の頃、初恋をしましたが、噂になって、怖気づきました。友達だから、それ以上ではないと自ら切ってしまったのです。これは夕牡丹に姿を借りた先生の若い二人へのアドバイス、励ましではないかとも思えます。こういうことを言ってくれる人は私の周りにはいなかったのです。(十河 智)

一瞬の検温にして滴りぬ  岡田耕治
 当季として初めてこの季語にあった。新鮮な夏を感じる。今はどこに行っても、まずあの簡易な検温器にさらされる。体温計としての精度は不明、データのばらつき具合もあまりよくは知らない。感染が始まった去年の今頃、学校の対策のために、品薄で探し回った。一瞬が、大人数の中から疑いのある人を弾き飛ばすのにはとても良いのだ。
 山中の戸外のイベント会場、または大学の構内へ入る第1関門であろうか。おでこを機械に向けるために背筋を伸ばす。目に入る山肌に滴りを見る。「滴りぬ」により、この句は安心感に包まれる。検温も大丈夫パスできたのだろう。(十河 智)



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