2021年5月23日日曜日

香天集5月23日 石井冴、谷川すみれ、安田中彦ほか

香天集5月23日 岡田耕治 選

石井冴
夕桜永遠には少し短くて
貝寄風の音はかすかな骨の声
母の日の白磁をすべるゆで卵
包丁を使わなくても春夕べ

谷川すみれ
悪意などないのだけれど羽抜鶏
天井のまだら模様に潜り込め
白菖蒲無口になって帰りけり
あたたかい息をしており未草

安田中彦
俗情も根性も嫌はうれん草
夏座敷大浪小浪見飽きたり
だんだんとスワンボートのつまらなく
帝国てふ坊主頭や飯饐る

加地弘子
ゆっくりと熟して与う親燕
包みほどく時より香る新茶かな
母が忘れ私が探す夜の新樹
夏場所の美しく座すワンピース

牧内登志雄
山百合の一際高し獣道
気動車のどどどどと消え青田風
風薫る鎌倉五山切通し
花はみな忙しく咲き夏は来ぬ

松田和子
ゆっくりと舌でころがす新茶かな
卯の花の匂いを秘めてひとつ星
飛魚の波北斎の波になり
鉄線花絵の具の藍をうすくして

古澤かおる
焼海苔を散らしレタスのサラダかな
祖父植えし桐に花咲き妹よ
キャンプの夜一口大に千切るナン
余花曇り三ツ星レストランに居て
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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