2021年6月6日日曜日

香天集6月6日 久堀博美、夏礼子、前塚かいち他

香天集6月6日 岡田耕治 選

久堀博美
一瞬を輝いてありあごの翅
鉄錆のにおいの中を蟹走る
ひとときは空が開けて滝飛沫
さみだるる美しく且つおそろしく

夏 礼子
芍薬や真昼のしじまわがものに
花桐や無名兵士の墓を訪う
植田風透明という色のあり
幼子を真似るくちびるサクランボ

前塚かいち
ワクチンの不安・安心薄暑光
百態の猫の寝姿梅雨に入る
短夜の猫の外出許しけり
梅雨晴間植木鉢にてねまる猫

浅海紀代子
部屋中をおもちゃに代える子猫かな
囀の大樹より今日始まリぬ
山法師散り敷く夕べ夢の跡
夫と居し歳月遠く枇杷熟るる

安部礼子
引き出しのⅠセントコイン夏来る
青竹の四隅と祝詞柿若葉
梅雨寒に眠る電池を外しいて
覆われていたのは時代蚊帳のあを

嶋田 静(4月)
春ショール纏いなおして本題に
髪切りてまぶしき街や花ミモザ
犬ふぐり見てうどん屋に入りけり
おぼろ月幼き妹かけて来る
 
河野宗子
双眼鏡小梅が位置を知らせたる
夏来る両足しかと土を踏む
雲紫陽花やステイホームは毱のなか
金平糖新茶をすする小さな手

嶋田 静(5月)
五月雨や机に並ぶ紙とペン
正座して新茶の甘み受けており
春の雨ユンボにもある休みの日
楠若葉真直ぐ一年生が来る

吉丸房江
早苗田に吹いてきれいな風となる
家四方開け放ちたる若葉かな
川音の低くなりゆく走り梅雨
五月雨の十色を超える傘の色
*岬町小島にて。


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