香天集8月29日 岡田耕治 選
森谷一成
水黽の陰に固まる暑さかな
睡蓮を掠めて渉る風が欲し
ながむしの舌先岐れ爆心地
青蜥蜴丸太を捲いて罷りけり
砂山恵子
涼新た山見る時も見ぬ時も
身に残る宇宙を胸にぶどう喰む
髪洗ふ泡に過ぎたる笑み残し
店の隅占め群になるところてん
中濱信子(8月)
朝顔や口腔の中見ておりぬ
二人いて一人不機嫌吾亦紅
吾亦紅夕空残るひとところ
蜩や太く切りゆくカレーの具
釜田きよ子
箸二本使う一生冷奴
西瓜に塩今は塩分控えめに
プライドの塊にして百合開く
朝顔の登りつめれば天のもの
中濱信子(7月)
十薬やこの地に住んで五十年
青田風休耕田を素通りす
新緑や名もなき山を大きくす
ワクチンの話かしまし百日紅
北村和美
25時の足音のこし天の川
星月夜君と半径ニメートル
伝言は指と指の輪敗戦日
シャーベットかわりばんこの匙ひとつ
古澤かおる
片かげり生姜こぼれる焼きそばパン
地蔵盆お菓子をもらうお胎の児
何回も同じメモ書き汗の腕
八月に餅焼けと言う恋人よ
嶋田 静
底紅や電話の声の表まで
陽に透けし翅やわらかくなるとんぼ
縞模様くっきりしたる西瓜かな
あの雲に蜜をかけんとかき氷
松田和子
蝉の殻早う早うとせかされて
輪をひろげ最大となる盆踊
白桃の赤児の肌のうぶ毛かな
大文字薪ならべゆく男衆
藪内静枝
うれしさよ蜻蛉が墓の前でまつ
掛け替えしのれんの藍に涼新た
絣着る涼しそうねと男の子
鳳仙花古き屋並の変わり目に
吉丸房江
太陽のパワーを集め唐辛子
秋雨にぐんと伸びたる草のあり
見つけたる初こおろぎの八十路かな
亡き友の祈りのかたち秋の蝶
永田 文
みちのくの音を響かせ鉄風鈴
新涼やシャッターの錆こそげたる
砂糖水まぜればけむる遠き日よ
朝顔の色を解きたるあかときに
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