2022年4月17日日曜日

香天集4月17日 加地弘子、三好広一郎、中嶋飛鳥、砂山恵子ほか

香天集4月17日 岡田耕治 選

加地弘子
蒲公英に這わせて写すこの笑顔
しゃがの花心ゆくまで水の音
パンジーや女体を揺らし笑い合う
黄泉路まで話の及び花の雲

三好広一郎
弥勒菩薩いちごケーキを思案する
清々しく十八歳の無一物
看護士の煙の長い春の昼
花冷えのどことは言えずそのすべて

中嶋飛鳥
紫木蓮許せぬ言葉消し難く
万愚節舐めた唇すぐ乾き
横顔の紅椿落つまたひとつ
幸先の視線の中をつばくらめ

砂山恵子
あたたかや人とゐること集ふこと
春ともし夫婦二人の夜の散歩
物言はぬことの身軽さ竹の秋
陰あればもうそこにゐぬ仔猫かな

春田真理子
亡き母のうしろにつづく土手桜
芹の川手鏡の母しまいけり
春光やヘンデルの木となる生家
菫摘むように遺されフォトブック

古澤かおる
空き箱に興ずる猫よ春うらら
陶工の揃うバンダナ牡丹の芽
野に遊ぶそこは車で一時間
椿餅茶柱の立つ茶を所望

北村和美
風光る赤マスカラの睫毛から
十年後のイニシャルMの卒業歌
菜の花や代返の顔にやりとし
ぶらんこの放物線の長き足

岡田ヨシ子
スーパーの移動販売夏集う
天草をびっしり広げアスファルト
暑を忘れ組合長が縄を張る
お互いに負けまいとして鯵を釣る

川端大誠
満開の桜が祝う初勝利
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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