香天集4月10日 岡田耕治 選
釜田きよ子
一日中背伸びしており葱坊主
首振ればペンペン草の音がする
付き指の疼きにも似て桜どき
新緑に風の濃淡生まれけり
三好つや子
不条理を抱える星や栄螺焼く
春光のそれは中村哲語録
麦青む少年という静電気
千年の春よこたわる木箱かな
柴田亨
ふらここを揺らし彼の地へ向かいけり
草萌の囁ききざす野の仏
墓標なき小さきものよ春巡る
若木にて精一杯の驕りかな
宮下揺子
春一番母を預かる日の暮れて
前髪を自分で切りし遅日かな
花種をもらいて帰る同窓会
十分間脳を鍛える花の雨
小﨑ひろ子
春の月爆弾の降る街を告げ
桜にはずつと翁が座り居る
遠き世の桜にあらず古戦場
ベランダに咲かせて遠き梅の園
永田 文
花曇何をするにもゆるゆると
さざ波の光る水面や梅真白
丈低し越前崖の野水仙
ぱくぱくと鯉は春日の泡を食む
牧内登志雄
屁をひとつ咳ひとつして放哉忌
花筏そこは運河のどん詰まり
一日を錆ゆく乙女椿かな
振つてから透かしておりぬ種袋
秋吉正子
摘む人の無くなっている土筆かな
閉園の桜今年も満開に
川村定子
小鳥来て逆さに止まり紅を食む
春愁や雲は故郷へと流る
大里久代
ランドセル思い出詰めてミニサイズ
卒業す夢ふくらませゆっくりと
北岡昌子
花びらの舞いはじめたる水の中
春の空飛行機雲の伸びてゆく
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
0 件のコメント:
コメントを投稿