2022年4月10日日曜日

香天集4月10日 釜田きよ子、三好つや子、柴田亨ほか

香天集4月10日 岡田耕治 選

釜田きよ子
一日中背伸びしており葱坊主
首振ればペンペン草の音がする
付き指の疼きにも似て桜どき
新緑に風の濃淡生まれけり

三好つや子
不条理を抱える星や栄螺焼く
春光のそれは中村哲語録
麦青む少年という静電気
千年の春よこたわる木箱かな

柴田亨
ふらここを揺らし彼の地へ向かいけり
草萌の囁ききざす野の仏
墓標なき小さきものよ春巡る
若木にて精一杯の驕りかな

宮下揺子
春一番母を預かる日の暮れて
前髪を自分で切りし遅日かな
花種をもらいて帰る同窓会
十分間脳を鍛える花の雨

小﨑ひろ子
春の月爆弾の降る街を告げ
桜にはずつと翁が座り居る
遠き世の桜にあらず古戦場
ベランダに咲かせて遠き梅の園

永田 文
花曇何をするにもゆるゆると
さざ波の光る水面や梅真白
丈低し越前崖の野水仙
ぱくぱくと鯉は春日の泡を食む

牧内登志雄
屁をひとつ咳ひとつして放哉忌
花筏そこは運河のどん詰まり
一日を錆ゆく乙女椿かな
振つてから透かしておりぬ種袋

秋吉正子
摘む人の無くなっている土筆かな
閉園の桜今年も満開に

川村定子
小鳥来て逆さに止まり紅を食む
春愁や雲は故郷へと流る

大里久代
ランドセル思い出詰めてミニサイズ
卒業す夢ふくらませゆっくりと

北岡昌子
花びらの舞いはじめたる水の中
春の空飛行機雲の伸びてゆく
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。

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