2022年4月3日日曜日

香天集4月3日 浅海紀代子、森谷一成、久堀博美ほか

香天集4月3日 岡田耕治 選

浅海紀代子
紫雲英田や今も駈け出す脚のあり
燕来て空がうれしくなっている
涙ぐむこと多くなる桜かな
麦青む昔の我に会いにゆく

森谷一成
戦前の口笛ひとつ梅の空
モノクロの山川草木原発忌
春寒の叫び上げたる鼓膜かな
天上の脈のとどろき花篝

久堀博美
気まぐれな風に彩増すミモザかな
足指を開いて閉じて春の雲
さくら咲く空家の庭に椅子二つ
図書館の一番奥の春愁

河野宗子
バラの芽やまだやわらかき棘を持ち
誕生を祝う絵手紙れんげ草
春の風邪つづく眠りの中にあり
たんぽぽを踏まない方へ散歩道

田中仁美
カーテンにタッセルつけてうららかに
ウクレレのGコード弾く朧の夜
自転車を押して傘さす春の雨
春寒や湯船の湯気の行き先と 

吉丸房江
マネキンの香気吹き出す春衣
ふる里のつくし摘みたくなってくる
チューリップポンと弾けてひ孫待つ
春の音小さきものから動き出す

垣内孝雄
啓蟄や盆栽鉢に罅の入り
亀鳴くや光の充てる仏の間
水温む音のならないオルゴール
小流れにただよふひかり老桜

岡田ヨシ子
草青む二両列車の姿にも
石段に坐る二人の薄氷
春うららポストの音は一通か
玄関や燕のふんの花散らし

大西英雄
天水を二人で急ぐ遍路笠
二人して雨にけぶれる遍路道
阿波の春お大師さんを追いかける

川端勇健
やどかりは見れば見るほどさわりたい

川端伸路
春休みスキーにいけばはしゃぎすぎ
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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