香天集5月22日 岡田耕治 選
玉 記玉
たんぽぽの絮の気分で待つことに
水音に骨格のある青野かな
ワセリンに薔薇の香ばらの香に私
優曇華も交えて飲もうではないか
安田中彦
陽炎燃ゆ瓦礫の中の写真帳
夏蝶や戦の庭といふところ
ゴールデンウィーク日本海を兎跳ぶ
塩壺に塩つぐ憲法記念の日
石井 冴
考える人を連れ出す蕨山
向き向きの千の窓辺や山笑う
知らぬ夜も男は男蜆汁
摘まみおり苺は猫の耳だから
夏 礼子
ぐい呑みのことりとひとり放哉忌
葉桜や程良い位置を探りいる
そら豆のとびだし思い出し笑い
杜甫の詩を声に八十八夜かな
三好広一郎
わが胸の一区画より日雷
美味そうな尻もちの音実梅かな
教室の隅っこ四葉のクローバー
麦の秋皮膚感覚を愉しめり
中嶋飛鳥
塒へと裏も表も夕焼けて
夕薄暑くすりを呑みてより病者
母の日の解きてのばす紙の皺
首すこし傾ける癖トマト咲く
加地弘子
偶然に桜に生まる筏かな
椿象の避けようもなくぶつかり来
立夏ごろり腕枕するゴリラかな
戦争をテレビで見つめ昭和の日
砂山恵子
アルバムに貼れぬ思ひ出石鹸玉
万緑を切り刻みゆく新幹線
自転車の家庭訪問麦の秋
わが影を追いかけるごと泳ぎけり
嶋田 静
花びらの落ちてみんなが埋まりけり
蝶々のまとわり付くよ君のこと
落人のそっと揺れたる藤の花
夕長しピアスのケース飛び出して
小﨑ひろ子
燕来る防犯カメラ据わる軒
青葉闇人の宴の跡として
風薫る古きシネマのあるあたり
ユリノキの花高みより見られをり
古澤かおる
少なくなる笑顔のひとつわらび餅
夏来るソースで食す明石焼
城跡の礎石の温み若楓
柿若葉白髪の見えるヘルメット
勝瀬啓衛門
屋外の竈にくべる杉落葉
南国に似せて玉解く芭蕉かな
なめくぢり出自引きずる鉛色
白靴や汚れるものと雲が言い
*中山寺にて。
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