香天集7月17日 岡田耕治 選
三好広一郎
眼球を一直線にかなぶんぶん
前がない後ろが消える俺の瀧
隣家消えそれは実の成る梅だった
薬降る凹凸のない摩崖仏
砂山恵子
起立から始まる授業夏木立
水なすび今日の光を溜めてゆく
蚊帳に寝て手足のすつと軽くなる
わが影を追いかけるごと泳ぎけり
釜田きよ子
日一日大国築く蜘蛛の囲の
蟻たちはわたくしよりも忙しそう
眉描いて炎暑に向かう顔作る
もの申す事多き世や田水沸く
宮下揺子
抗えぬ形のままの麦の秋
子に戻る母の眼前柿若葉
半夏雨亡き人宛にくる手紙
曇日のプール開きや声立てず
春田真理子
逝く命授かる命竹の春
水温む胎児が背伸びしたと言う
水無月の満潮となり誕生す
短夜のお七夜の児は眼をひらく
古澤かおる
夏雲や北アルプスと八ヶ岳
喜雨至るサラダボールのクレソンに
道路鏡洗う日の来る百日紅
ごわついて乾く干し物夾竹桃
北村和美
疑問符に問い返す目や蟻地獄
父の日の眠る背の上さわがしく
ステップのリズムが乱れ夜光虫
あめんぼう自由に呼び名呼ばれけり
岡田ヨシ子
夏燕並びて話す別の場所
白鷺の窓辺トースト香りたる
これは森これは林と緑さす
レース着るあなたは誰と問われけり
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