香天集7月10日 岡田耕治 選
玉記玉
会うときはたまたまミミズたまたまヒト
星ひとつ友としている夏休
悉くほどけ阿蘭陀獅子頭
走り書く数字涼しく更けゆけり
三好つや子
少数派が好きって感じ牛蛙
鮎跳ねる水の鼓動を背割して
食堂のやかんの麦茶きゅんと濃し
ストレッチは愉しい悲鳴さくらんぼ
渡邉美保
虫瘤の雨にふくらむ夏休み
新旧の役員揃ふさくらんぼ
頭数揃ひ始める祭笛
焼茄子の香りを好み白寿なる
久堀博美
柵を抜け出している姫女菀
密閉の蓋がはずれて夕焼ける
薔薇の香に侵されている思考かな
何ごともなき日薄色サングラス
中嶋飛鳥
踊り字の外れて斜めに半夏雨
去り際を知らぬ顔して糸トンボ
袋桃母はめったに叱りません
山帽子あやつを殿と決めて
河野宗子
大西日はずんで落ちる五分間
友の家跡形もなく梅雨に入る
梅雨晴や特急の席決まりたる
破れ傘今日という日をにぎやかに
田中仁美
友からの返信を待つ水羊羹
洗い髪嫌な事から前を向き
腕に刺す蚊を仕とめんと身構える
懸命なダンスバトルを汗走る
牧内登志雄
九相図の色に寂びゆく四葩かな
螢火やマスクで隠す修羅の疵
愚痴ひとつ落としてすくふかき氷
峰雲の威風堂堂立ちにけり
北岡昌子
本殿に雷落ちる響きかな
祓い受く茅輪くぐりの三回目
秋吉正子
炎昼やすべてを拒むすべり台
配達のバイク横切る蛇の衣
大里久代
九つの橋をくぐりて梅雨最中
紫陽花に足重くなるバスツアー
中田淳子
行先の友だち浮かぶ虫払い
田植えする人居なくなる日の光
*大阪府堺市にて。
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