香天集7月3日 岡田耕治 選
谷川すみれ
手花火の消えはらからは散り散りに
歳月はビルに埋まり蜘蛛の糸
触れるほどわからなくなるお花畑
花柘榴いつも向うに父がいて
柴田亨
正しきことのみでは淋し五月雨
改札に待つ人のいて夏始
夢に住む人たちのこと夏帽子
イッセーノー子ら散り散りに雲の峰
辻井こうめ
夏薊人の世ちらとヌートリア
口福は新玉葱のホイル蒸し
カラカラの円環となるみみずかな
六月のナンジャモンジャの花無数
浅海紀代子
たんぽぽを抜くを幼にとがめられ
口笛が通り過ぎゆく風五月
父の日や父の返球なきままに
時鳥遠くの闇の誘いにて
中濱信子
コロナのコいえ小手毬のコを選ぶ
雨つぶを遊ばす広さ花菖蒲
青葉風厨にて句を賜りぬ
青空が吸い込んでゆく白日傘
楽沙千子
鯉幟子の名をしるし流しけり
百年の企業を閉じるメーデー歌
ぼうたんの切口揃え無骨な手
足もとに豊かさのあり麦青む
釜田きよ子
銀の道作りなめくじ遁走す
朝顔の伸び盛りなる笑顔かな
捨て苗のいっぽんずつにある個性
絵手紙の茄子と胡瓜の曲がりっぷり
吉丸房江
弾きたる水の眩しく茄子の肌
競い咲く菖蒲を思い雨を待つ
長靴の玄関狭し梅雨の明
子心に引きもどされるさくらんぼ
垣内孝雄
結願の山の深さよ青葉騒
彼の人のやうに生きたしかたつむり
蟾蜍けぢめ大事にしていたり
おもむろに騾馬の草はむ夏野かな
嶋田 静
メタセコイア太古の若葉見えてくる
恐竜の口に飲まれし蜻蛉の子
薔薇の香を纏いしままの手紙かな
柏餅丸める母の手の厚み
藪内静枝
天神さん若葉青葉の釣り天井
初生りの胡瓜の青を食みにけり
きらきらと星をほとばし額の花
解禁のすぐあと三重の鮎香る
永田 文
花石榴ぽたりと伏していたるまま
朝刊へのばす手蜘蛛の糸からむ
水たまり雲の上なるあめんぼう
玉葱と吊るされており作業服
0 件のコメント:
コメントを投稿