香天集6月26日 岡田耕治 選
渡邉美保
車前草を踏んで手足の老いにけり
草笛のよく鳴る草を与えられ
まつさらな空葉桜の隙間より
明易し雨のすぎたる静けさに
夏 礼子
青空を食みはじめたる新樹かな
光なきものは蛍と飛びにけり
雨音へ色をうつせり濃紫陽花
梅雨に入るマスクの耳の反抗期
森谷一成
蜃気楼西に援蒋ルートありき
一丸になれない人へクローバー
群衆を演じ終えたるクローバー
菖蒲田を出てきて思い切りべろり
砂山恵子
あるだけの日を溜めてゆく日向水
夏越祭おはり大きく白鳥座
紐緩めしことに始まり登山小屋
星からの電波を受けて開く蓮
木村博昭
新緑や堂塔伽藍朱に塗られ
蘭鋳はいつも余所見をしていたる
気弱なることを隠して蟇
梅雨寒し核シェルターを買う話
神谷曜子
夏銀河中のひとつをイヤリング
五月雨の音を重ねて膨らみぬ
夏氷食べつつ話し若返る
ゆるやかに老いゆくためにぐみを煮る
古澤かおる
人力の古墳調査よ雲の峰
病葉や束の間思いっきり晴れて
キッチンの窓より薔薇の見える家
夏服の鎖骨に擦れしベルトかな
春田 真理子
訃報連れ鴉の渡る梅雨晴間
紫陽花にかくれんぼの子鬼子母神
仏壇の奥より出でし夏の蝶
太陽に目玉を貰うガザニアは
牧内登志雄
夏みかんやつぱり酸つぱ君の嘘
濁り鮒尾びれ打つ音水の音
姉さんに女の匂ひ初浴衣
海鞘むけば黒き笑顔の弾けたり
*大阪市内にて。
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