2022年6月19日日曜日

香天集6月19日 石井冴、三好広一郎、中嶋飛鳥、加地弘子ほか

香天集6月19日 岡田耕治 選

石井 冴
銀髪の光るヨットが帰り来る
父の日の父は個室を出て来たり
青蛙匂いを連れて友が来る
段段と恐ろしくなる蛍の夜

三好広一郎
桃は浮く水に達者な舞子はん
心太ノルマのきつい人だろう
金魚売手を濡らさずに子と遊ぶ
短夜や終わりよければ再生す

中嶋飛鳥
夕薄暑くすりを呑みてより病者
形代のそのたゆたいを手にて押す
棘失いてより薔薇の人嫌い
水を打ち病原菌を鎮めおり

加地弘子
全景のあちこち尖る桜のあり
風船の忘れられない離れ際
木に逃げる息を乱せる守宮かな
姫女苑路の普請に駆り出され

安部礼子
炎天の飽和飛行機の音こぼす
いけないことはみんな君のハンカチ
噴水 唐突に性忘れけり
少年の夏チェレンコフの光充ち

楽沙千子
格子戸の造り酒屋の緑雨かな
空港を沖に控えるヨットの帆
大正の献立が良し洗飯
窓枠の新緑飛ばす路線バス

春田 真理子
耕せり吾の血筋を思いつつ
追われゆく時間と別に葱坊主
卒寿来て免許を返す五月かな
万緑や平均律の木霊する

岡田ヨシ子
石鯛や撮影中に跳ねて海
絵手紙とする紫陽花を選びけり
大蟻にゴメンとシューズ重ねおり
夏の朝始まる舟のエンジン音

大里久代
ホーホケキョ練習重ねホーホケキョ
鈴生りの狭まってゆくミニトマト

北岡昌子
玄関に向日葵を生け人を待つ
耕運機の音のなくなる胡瓜かな

秋吉正子
雨の中来る通販の扇風機
薫風や歩いて行ける道の駅
*大阪市内にて。

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