2022年6月12日日曜日

香天集6月12日 玉記玉、柴田亨、渡邉美保、三好つや子ほか

香天集6月12日 岡田耕治 選

玉記玉
更衣太平洋が近くなる
滴りに触れて光を殺めたる
翡翠の去ってさっきはもう昔
片方は空に掛けたるハンモック

柴田亨
バスを待つ無言の二人春の雨
白詰草我が胸中を満たしおり
それぞれの明日香眩しく少年よ
傷痕の静寂に触れ梅雨に入る

渡邉美保
ガガンボのわが白髪に紛れけり
竹林に雨の兆しや豆ごはん
若葉風金管楽器光り合ふ
梅を煮るやさしき火種紙の蓋

三好つや子
ホスピスの遺伝子かしら蝸牛
逡巡を先回りする守宮の目
蜘蛛の糸ライフラインが縺れ合う
昼光色と昼白色の海月かな

宮下揺子
屈折の無きまま朽ちる薔薇の花
先生の癖字は元気韮の花
燕来る極彩色のキッチンカー
子に戻りつつある母や柿若葉

牧内登志雄
蚊帳吊るや百鬼夜行の息遣ひ
どうせよと問ひたる君のサングラス
元妻の指輪の跡や蚊遣香
古詩集開けば深き青葉闇

北村和美
引き出しを空っぽにして麦の秋
子供の日かたわれの靴並びおり
羅や体温の香のまとわりて
走り梅雨セーラー服の襟はねる
*大阪市内にて。

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