香天集7月31日 岡田耕治 選
森谷一成
墜るなら枝垂れ槐の花の下
玉虫の脚の尖までメタリック
遠泳の地球だんだん白くなる
涼風や老婆が眠る大きな手
谷川すみれ
赤のまま父は母より長く生き
八月の一木は私の祈り
老人の両手に袋九月尽
白芙蓉解体中の日が暮れる
石井 冴
人を待つ化石の柱星涼し
少年のようで二の腕茄子を焼く
夕端居炎の人が横に居る
近未来予測している青とまと
木村博昭
一点にへばりつくものある網戸
数字では表せぬこと星涼し
風鈴の鼓膜を襲う数であり
音と音ぶ
つかり合える炎暑かな
つかり合える炎暑かな
辻井こうめ
「俱会一処」のみの墓石の涼しさよ
水無月の淡竹あっさり出汁効かせ
真二つの石の断面星涼し
動き出す恐竜のあり昼寝覚
嶋田 静
夏深し髪を切りたくなっており
青嵐ガラスの昭和透けて来る
水の精隠れていたる四葩かな
父の日やつま先開く靴のあり
神谷曜子
初蛍夜は密密と厚くなる
くり返す失敗見つむ青蛙
医者に叱られ紫陽花の青に入る
丁寧な残り梅雨なり夜の木木
薮内静枝
トマトまだ熟れていないと烏の目
金亀子ちょっと陽気になっている
藻の花と今朝に生まれて目高の子
沼島より土用の鱧の届きたる
*上六句会(ホテルアウィーナ大阪)にて。
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