2022年8月7日日曜日

香天集8月7日 柴田亨、渡邊美保、浅海紀代子、中濱信子ほか

香天集8月7日 岡田耕治 選

柴田亨
翳深く伸びる一樹の原爆忌
大夕焼け向こうに暮らす人のこと
あじさいは枯れるお前はどう生きる
人間は夏に会うらし夕雀

渡邊美保
職員室の窓に立てかけ捕虫網
日雷キウイのジュレを掬ふとき
星涼しシーラカンスは鰭を閉じ
考妣の声のしている青岬

浅海紀代子
囀に鴉の声の刺さりけり
時どきは女に戻る月見草
夏風邪に手足うろうろしておりぬ
昼寝覚俳誌一冊胸の上

中濱信子
風を待つ小手毬に声かけており
守宮くる土曜の夜のガラスかな
初蝉の家の裏より表より
朝顔のあちらこちらの陽をもらう

河野宗子
七夕竹「またね」と書いて友の逝く
ルリ蟻や零すワインに群がり来
いつまでも手を振っている大夕焼
万願寺ピーマンはまず仏壇に

田中仁美
三二ゴーヤ手のひらに乗せくすぐらる
夏の旅キャリーバッグを鳴らし行く
甘い物やめると決める朝曇
夕立や上着頭にして走り

牧内登志雄
夏までの余命の人と初西瓜
炎昼やカレーの辛さ5を選び
青空をぷしゆつと開くラムネ玉
手花火や嘘はぱちんと弾けたり

垣内孝雄
校庭の空いつぱいの秋日かな
手捕りたる飛蝗の貌をいぶかしむ
補助輪を外してをれば秋立ちぬ
螢追ふ父の背中をまのあたり

吉丸房江
水打って亡き母親を近くする
朝顔の一度切りなる紺の色
夏野菜どさりと置いて急発進
両の手が風送りいる玉の汗

岡田ヨシ子
電線に並び話せる燕去る
雨のたび白くなりゆく干天草
昼寝覚体温計のメロディと
またコロナ増え子どもらの夏休

川端伸路
だいにんきフルーツあじのかきごおり
あまがえるはっぱの上で一かいてん
夏休みあつくたたかうやきゅうぼう
せんぷうきもうすこしだけ一人じめ

川端大誠
マンゴーにおなか大きくなってくる

川端勇健
スプーンがへばりついてるマンゴーよ
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

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