2022年8月14日日曜日

香天集8月14日 玉記玉、三好つや子、中嶋飛鳥、久堀博美ほか

香天集8月14日 岡田耕治 選

玉記玉
水飲んで蛇の衣ほど重くなる
恋文の末尾ハイビスカスのこと
ぼうたんの芯は煙たい国である
酢のような声で呼ばれて百日紅

三好つや子
万象の一音ぽんと蓮ひらく
百姓という肩書の涼しさよ
恋文を覗いておりぬ水中花
黒板に黒板の音もどる秋

中嶋飛鳥
コロナの禍スイカ嫌いは返上す
白日夢に似て騒擾の奈良の夏
雲の峰しばらく後ろ歩きして
接種待つ肩の辺りを黒とんぼ

久堀博美
指を差しアイスキャンディー一つ買う
住む人の顔は知らざり花ユッカ
そのたびに岩の震えて滴れる
腰下ろす石のほてりや鬼やんま

春田真理子
紫陽花の雫晃りて命名す
新真綿初孫を抱く重さにて
八月の天へ突き出し児の拳
赤子泣く声と祝詞の菊日和

北村和美
水鉄砲袋小路に居る君よ
まよい箸ひさびさに会う夏座敷
かき氷一直線に着くベンチ
ラムネ飲む逆光を背に二人して

大西英雄
青田道比叡から風わたりゆく
延暦寺読経につづく蝉の声
比叡の夏手に取るほどのびわ湖にて
阿波踊り竹人形のひろがりぬ
*岬町小島にて。

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